われわれには、説得材料があった。まず、この物件の所有者であるソフトハウスの社長に関してだが、彼は毎月の資金繰りにオーバーワーク気味で、じつは賃貸に出しているマンションの家賃が四ヵ月分も滞納になっている事実にさえ気がついていなかった。その点を社長に指摘すると、「ああ、これはすぐ取ってこなきやまずいな」「じゃあ、ついでですから、われわれが行ってきますよ」ということになった。これは賃借人に会って、マンションがどういう使われ方をしているのかを調べておく意味もあったのだ。
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実際にマンションに行ってみると、契約違反があった。一人で住むという契約になっていたのに、ディスコの従業員たちがタコ部屋同然で住んでいたのだ。しかも、そのディスコも例にもれず、バブル崩壊によって事実上消滅していたから、家賃も支払われていなかったわけだ。そこに住んでいた若い人たちに、所有者であるソフトハウスからの委任状を示すと、「すいません。すぐに出ます」という話がついた。出ていく日にちを指定した誓約書を取り、滞納した家賃の清算方法もきちっと取り決めた上で、出ていってもらった。銀行やH協会などの債権者側では、こういうところまでは手がまわらない。というか、そもそも、抵当にはいっている物件がどのような状態で使われているかなどにまったく関心がないのだ。実際のところ、家賃が滞納されていた事実を、債権者側も知らなかったのである。それもまたこちらの交渉材料になる。