長寿社会対応戸建て住宅設計指針(案)が出てしばらくして、一九九二年夏から秋にかけ、それに準拠したモデル住宅が完成した。これらのモデル住宅は、建設省総合技術開発プロジェクト「長寿社会における居住環境向上技術の開発」にもとづいた建設省建築研究所との共同研究に参加した住宅メーカー二社によって、それぞれ建てられたものである。指針案そのものが、主として建築研究所と先の住宅メーカーとの共同作業により作成されたものであるが、そこでめざしたのは特定の少数の高齢者のためではなく、誰でも住めるものでありながら高齢者を排除していない住宅であった。この「指針案」が現実を無視した砂上の楼閣なのか、それとも十分に利用可能なものなのかは、その実用化をはかるにあたって関係者のもっとも重大な関心事であり、指針案にもとづくモデル住宅の建設は、その検証を行うのに最適な方法であると考えられた。もちろん、具体的な建築の評価は一般にかなりの時間がかかるものだが、ここに組み込まれた設計内容は、それ以前の蓄積をもとに選定されたものであり、その時点でおおまかな評価を下すに足るだけのデータは得られたと私は判断しているので、ここでそれを述べようと思う。その前にまず、長寿社会対応戸建て住宅設計指針(案)でめざしたものは何かをはっきりさせておく必要があろう。それらは、(1)三〇年先にも基本的には住み続けられ、(2)安全性・快適性・使い勝手が保証され、(3)過重でない要求水準であり、(4)加齢に伴う要求変化に対応した可変性を備え、(5)必要に応じて選択できるオプションが用意されていること、といった項目である。具体的な住宅のデザインとしては、「床の段差解消」「手すりの設置」「安全な階段」といった特徴を備え、「部屋の用途変更が容易」で、かなり大規模な改築が構造に影響を与えずに可能という設計になっているものを念頭に置いている。要件はすべてが同一の重要性を持つものではなく、対応の肝要さの程度(とくに安全性や使い勝手)、経済性、妥当性などによって、基本・標準・推奨の三つにランク分けされている。
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